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愛犬・ゴールデンレトリーバーのナツを重い病気で亡くし、傷心のテレビディレクターの久野かなみ(小林聡美)は、何をしようにも気力が湧かない。そんなとき、大先輩の映画監督渋谷昶子さんに「悲しむ暇があるなら、犬の映画を撮れ」と励まされ、犬の命をテーマにした映画を撮り始める。

飼い主のいない犬と猫は、「動物愛護センター」で一定期間保護され、飼い主や引き取り手が見つからなければ殺処分されてしまう。かなみは、センターで殺処分される犬猫や、2011年の東日本大震災後、福島の原発20キロ圏内に取り残された犬猫の姿を目の当たりにして大きなショックを受ける。しかし、取材するうち、過酷な状況から一頭でも多くの命を救おうとする人たちと出会う。

「ちばわん」は、千葉県を中心に、愛護センターに持ち込まれた犬や猫の里親捜しをする保護団体。代表の扇田桂代さんは、崩壊したブリーダーの店から46頭の犬を救い出したり、被災地の犬猫に無償で不妊去勢手術を行っている。副代表の吉田美枝子さんは、毎週愛護センターに通い、2015年までに5000頭の犬と猫の命を救ってきた。

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一方、広島に本拠地を置く、「犬猫みなしご救援隊」は、シェルターを構え、1000頭以上の犬と猫を保護している。震災後には、福島の原発20キロ圏内から1400頭の犬猫を救い出した。代表・中谷百里さんは「人間のエゴで動物を殺すのは間違い。助けられる命は全部救う」と言う。彼女たちの真剣な取り組みを知ったかなみは、「自分には何ができるのか」を問いかける。

そんな折、離婚して10年になる元夫・前田勇祐(上川隆也)から連絡が来る。かなみは、犬たちの悲惨な状況を取材するだけで何もできない自分のふがいなさを告白。カメラマンの前田は、「自分たちの役目はそれを撮って伝えることではないか」と励ます。彼に背中を押されたかなみは保護されたあとの犬たちの取材を始める。震災を生き抜いた犬と飼い主の絆、保護犬を積極的に受け入れる老人ホーム「さくらの里山科」のお年寄りと犬との愛情あふれる暮らし。

行き場のなかった犬たちが新たに出会った人たちと支え合いながら生きている姿を見て、犬と人のつながりにもいろいろな形があることを知る。「嘆くだけでなく、自分でできることをしよう」そう気づいたかなみは、ある決心をするのだった。

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